dangkangの日記

主に日常,たまに研究と仕事について

大人の工場見学

先日,ヨーロッパからの留学生3名と一緒に,野田市にある○ッコーマンの本社に工場見学に行ってきた.学生には悪いけど,教員が一番楽しんでいたのでブログにまとめておく.なお,工場見学時の写真撮影は原則不可なので,テキストだけです.

 

 

製造プロセス

醤油の原料は,大豆,小麦,食塩.これだけ.

1. 大豆と小麦に下ごしらえをする.

大豆は蒸したあと,搾って油分を取り除く.大豆から作るものを「丸大豆醤油」というが,それ以外はコスト削減のため,オイル会社が大豆から油を抽出したあとの残りを買い取り,これを醤油に使っている.小麦は炒って細かくされる.

2. 大豆,小麦,麹菌をまぜる.

麹菌は○ッコーマン麹(発音するとアレ)と呼ばれる秘伝のもの.3日寝かせると,「しょうゆ麹」ができる.

3. もろみを作る

しょうゆ麹に食塩水をまぜたものを「もろみ」という.もろみは時間をかけて発酵し,○ッコーマンの場合,酵母の力のみで発酵させるため,このプロセスに6ヶ月かかる.なお,市販のもろみはワイン等が混じっているため,純粋なしょうゆ製造プロセスでできるもろみではない.

4. 布にもろみを入れる

6ヶ月後,もろみをナイロン布の中にいれて,平らに伸ばす.

5. 醤油をしぼる.

ナイロン布を何段も積み上げていくと,もろみそのものの重さで醤油がにじみ出てくる.最初の段階は濃く,だんだん薄くなっていく.これを容器に移してしばらく置くと,澱,しょうゆ,油分の三層に綺麗に分かれる.

 

所感

すべてのプロセスは機械化が進んでいるが,しょうゆ麹ができるプロセスと発酵プロセスは菌と酵母の自然の力に依存している.某国の醤油はこの発酵プロセスがナチュラルではない.ケミカルを投与して1週間程度で発酵を加速させてしまうため,問題になっている.

機械化は,品質の安定に貢献している.現在の食品衛生管理法下では,木製樽を用いる運用コストは高い.とはいえ,天皇家への御用醤油は,以前として木製の樽が使われている.

品質だけではなく,供給量の安定下のために,大豆と小麦をすべて輸入して賄っている.国産大豆と小麦を使った醤油は,北海道の一部の工場で製造されているものの,需要を満たすためには,輸入モノに頼らざるを得ない.

 

機械化と自然/天然の共存,あるいは,品質と供給量の安定化と伝統的製法の保存 - これらの絶妙なバランスを保ち続け,いまだIdentityを維持できている,その裏には現場と経営陣の甚大な努力があるのだろうなあ,と感動すら覚えたのであった.

 

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