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dangkangの日記

主に日常,たまに研究と仕事について

退職のお知らせ

 

どうも9月30日で2009年より5.5年間勤務した慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(以下KMD)を退職しました。いつか退職エントリを、というモチベーションでこのブログを始めたことを覚えている熱心な読者がいることを信じています。決して流行りに便乗してなどいないッ!

本来は9月30日に退職エントリをポストする予定だったのですが、時間が確保できず、今日になった次第です。10月1日より何をしているかというと、慶應でのポジションは義塾付の訪問講師に変更となり、しばらくはふらふら仕事したり、旅行したりする予定です。また今後のポジション等についてはこちらのブログで勝手にお知らせしたいと思います。


さて、せっかくなので、2009年から2014年まで僕がKMDで何をしていたか勝手に振り返ってみながら、個人的な反省、そして勝手な提言をしたいと思います。

# ほとんど内輪ネタです、すみません。

 

1. 国際連携
2011年から13年までCUTE CenterにKMDのスタッフとして関わっていました。シンガポール側のスタッフと一緒に論文書いたり、レクチャしたり、展示のお手伝いをしていました。あと主に美味しいごはんを食べていました。チキンライス、モンゴリアン・バーベキュー、辣子鶏、四川麻婆豆腐、バターチキン、ラクサ鍋、挙げればキリがありません。2007年の博士取得後、視察のために初めてシンガポールを訪れた際は正直こんな熱い国で生活するのは無理だと思っていたけど、年に1ヶ月以上シンガポールで過ごすこと3年を経て、今となっては寂しい限りです。

もう1つの国際連携はCEMS。CEMSというのはヨーロッパを中心とする27のビジネス・マネジメントスクールの連合体で、各国1大学院ほど加盟校がCEMS本部によって選定されます。日本の代表が慶應で、そのうちコーポレートパートナーと一緒になってパートナーの課題に半年かけて取り組むビジネスプロジェクトをKMDが担当していました。僕はそのスタッフとして2011年の準備段階から関わり、2012年から3期に渡って、プログラム開発や学生指導に従事してきました。ヨーロッパのトップエリートのレベル、思考法を肌で実感できたことは何より財産です。彼らと接することで、自分の研究が影響を受けた部分もあります。

2. 産学連携
KMDの特色の1つが産学連携。特に2つのプロジェクトが勉強になりました。1つは、bouquet。株式会社i879とのコラボにより実現しました。学生2人と若手教員2人のプロジェクトでしたが、個人的にはKMDの過去から現在のプロジェクトの中でもベスト3に入るプラクティスだと思っています。なぜならば、学生起案でスポンサーを獲得したため、調査、企画、設計を学生が担当し、正式にリリースされたため、最後に、現状も運用が継続され、利用者からポジティブな反応が多いためです。個人的にも学んだことが多くKMDのような大学院大学においてサービスを企画運用する1つのケースになったと思っています。

もう1つのプロジェクトがToppan VR凸版印刷株式会社とのコラボにより実現しました。初期は学生1人に若手教員2人のプロジェクト、途中から修士1人、博士1人、研究員1人、若手教員2人になりました。若手教員2人は専門分野が異なり、1人はVR・触覚研究、僕はというとこのチームではプロダクト・サービス・システムデザインを担当していました。実際に小石川のVRシアター、東京国立博物館・ミュージアムシアターで企画を実施しました。

3. 個人研究
2009年よりいくつかグラントをとって個人研究を行ってきましたが、中でも途上国、デザイン、イノベーションをキーワードとした研究を開始できたのがKMDでの何よりの遺産だと思います。UXマガジンに採録された構造構成主義的BOPプロダクトデザインメソッドを始めとして、これを拡張したBOPデザインフレームワーク、さらには、ケープタウンで開催された国際会議にて発表した途上国向けデザインパタンフォーマットなどいくつかの研究を実施してきました。

 

とりわけ、2010年から実施しているWanicが最大の成果物だと思います。東ティモールで生まれたWanicは、現地に豊富に存在するココヤシの実を使って作られる新しい酒です。醸造酒と蒸留酒という2つのプロダクトが存在し、顧客は先進国からのツーリスト、あるいは、先進国に住む人々を想定しています。Wanicを作る現地の人々に加えて、ココヤシ農家、ツールキット製造メーカー、レストランへの配送業者、レストラン・バーなど様々な新たな職を生み出し、経済的なイノベーションを実現します。2014年3月に会社化し、2015年には1000本限定で蒸留酒を日本で販売予定です。

続いて、個人的な反省を3つ。

 

1. 教育
SFCとは違うということで、これまでの自分の教育方法とは違ったやり方を一から作り上げる必要がありました。大学院大学なので、学生には2年間しかない、しかも3rdセメスターは就活、4thセメスターは修論ということを考えると、実質、最初の1年である程度研究を軌道にのせてあげる必要があります。そのためには1stセメスターで手法と知識を徹底的に教えて、2ndセメスターで徹底的にアイディアを形にする訓練をするべきだったと今となっては思います。

 

2. 英語
英語力はKMDに来てから飛躍的に向上しましたが、まだまだ日本語の戦闘力に及ばない。春学期はCEMSで週のほとんどを留学生と一緒に過ごしたり、秋卒の学生の論文指導をしていると、英語しか話さない日も多々あり、英語力を向上・維持できる環境にいたのですが、今後は意図的に時間を作っていかないと維持どころか低下してしまいそうです。ひとまず半年間の充電期間の間にTOEFLは懲りずに受験の予定です。目指せ100点。

 

3. 単著
結局KMD在籍中に脱稿することはできず、未だに書き直しています。メインクレームを書き直すこと数回、ようやく今後のキャリアとマッチしたかたちでメインクレームがまとまってきたので、これから最後の仕上げに入ります。2015年度までに発刊できるように今月中になんとか目処をつけたいところ。


最後に、個人的な提言を3つ。

 

1. Startup or Stop 
「MITが demo or die ならば、NUSは Speak and Speak だ」とはうまいことを言ったもんだと思うのですが、KMDも口を動かす前に、動く or 作る、くらいの過激さがあってもよいと思います。「起業したいんです」「サービス作りたいんです」という相談を僕にするよりも、「こういうサービスどう思います?」とか「サービス立ち上げたんですけど、うまくいかないから相談にのってほしいです」というほうが、イノベータを自称する集団としてはあるべき姿だと思います。スタートアップの経験があるKMDスタッフは残念ながら僕を含めて2名しか在籍していませんでしたが、今後はそういう人も増えると楽しそうです。

 

2. 適切な評価軸
実践型研究の場合、実行したことそれ自体に価値がある場合も多いのですが、個人的には結果を適切に評価すべきだと思います。また、それが出資者であるスポンサーへの責任であると考えています。電子工作やプログラミングのハードルが10年前と比較して著しく低下しているのと同様に、Webサービスやアプリは、誰でも数ヶ月訓練すればリリースできると言っても大げさではありません。もはやリリースするだけでは価値がなく、リリースしたものを適切に分析し、評価して初めて研究と言えるのではないでしょうか。例えば、10年間実施しているプロジェクトがあるとして、10年という日時は、縦断調査をするにも十分な期間です。研究対象として大きな価値があるものが放置されているのを見ると何とももったいないなぁと思います。

 

3. 異なる専門性のコラボ
2008年設立当初からは暫くプロジェクトには複数の教員があたるというルールがあったのが、それがやがて失われていきました。それを危惧して個人的に分野が異なる教員のプロジェクトに意図的に絡むようにしていきました。同じ分野の教員が1つのプロジェクトに所属しても「船頭多くして船山に登る」の諺の通りの結果が待っているだけでしょう。せっかく色んな教員がいるんだからコラボしない手はない。そういう距離の近さだとかアットホームな雰囲気は前職にはなく、(教員会議には出たことがないので、噂だけですが)SFCにもない特色なはずです。

 

こんな感じで長々と書いてきましたが、僕はKMDに来て良かったなぁと思います。個性的な学生、優秀な事務スタッフ、自宅から15分の好立地に加えて、何よりも他では知り合えない教員の皆様と仲良くさせていただいたことが最大の財産です。一旦?KMDから離れますが、今後とも研究や仕事など何らかの形で貢献できればと個人的には思っています。5.5年間お世話になりました。

 

徳久