dangkangの日記

主に日常,たまに研究と仕事について

退職のお知らせ

2019年3月31日付で4年間勤務した山口大学 国際総合科学部を退職いたします。せっかくなので、4年間の主な成果をまとめておきたいと思います(デジャヴ感ありません?私はある)。

 

 

単著

最大の成果は、2018年10月8日に上梓した『地域発イノベーションの育て方 - リソースから紡ぎ出すイノベーション』です。2010年から活動を続けてきたWanicプロジェクトと山口での経験をベースに書き上げたものです。本格的な執筆準備は2013年頃からなので、随分時間はかかってしまいましたが、執筆当時のすべてを出し切った感はあります。足掛け4年にも渡ってご指導いただいた奥出先生におかげで良い本に仕上がったと思います。

 

CHI

CHI 2017にて、Full Paper (FLIPPIN’ : Exploring a Paper-based Book UI Design in a Public Space)が採択されました。KMD時代からのパートナーである凸版印刷さんとの共同研究結果です。HCI領域の研究者にとってCHIは1つの大きな壁だと思います。凸版印刷さんの力によるところが多いのですが、その壁を越えられたことには満足しています。データを取るために2015-2016年は大阪はグランフロントに何度も足を運んだのも良い思い出です。また松葉行きたいですね。

 

WANIC Coconut Spirits 2015

2016年9月にはWANICの製品プロトである「WANIC Coconut Spirits 2015」が100本限定でリリースされました。リリースにあたっては、レシピ開発に尽力してくださったLAODIの井上さん、Wanicプロジェクト全員のリソースが不可欠だったと思います。今後は継続的に事業を展開できるよう、投資先を検討していくフェーズに入ったと考えています。

 

PBL

山口大学 国際総合科学部ではB3の秋学期から卒業研究に変わるプロジェクトが始まります。私の場合は山口市をパートナーに迎え、初年度は、地方創生をテーマとしたプロジェクトに取り組みました。SFC、KMD、Takramと、私がこれまで参加したプロジェクトで得た経験をすべて投入できたと思います。学生にとってはなかなかにハードであったと思いますが、最後まで応えてくれたことに感謝しています。とてもよいチームだったと思います。(新設から1年後の参加だったため)KMDの時には味わえなかったのですが、一期生に対する感情というのは少し特別なものがありますね。

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語学

国際総合科学部にいるとバイリンガルが普通であって、3カ国語以上話せる教員、学生がいるわけです。学生よりも英語力が低くてどうする?というモチベーションから継続的に英語力を上げるトレーニングをしてきました。2018年3月にはTOEICも900越えたので、2018年は中国語の勉強をはじめました。きっかけは移籍云々という諸事情的なアレからでしたが、今はそういう話はさておいて、勉強を継続しています。言語を学習するのは正直辛いことの方が多いですが、新しい視点を獲得できるという意味で人生をより豊かにする1つの方法と思っています。まさかトライリンガル目指してるとは20年末の学部生には思いもよらかなったですね...


一方、やり残したこともいくつかあります。

新山口駅北区拠点施設向けイノベーション・プログラム

2017年より山口市からの委託にて、2020年に開業予定の新山口駅北区拠点施設内に提供される、シェアハウス・コワーキングスペース・シェアオフィスを舞台としたイノベーション・プログラムのデザインに従事していました。プログラムの草案の構築にあたって、様々な専門家の方に話を聞けたことは非常に刺激的でした。

思い返せば、2015年3月には山口市の協力のもと「地方発イノベーションをデザインする」というシンポジウムを大学内で開催しました。豪華なゲストにもかかわらず、僕の努力不足であまり集客がうまくいかず悔しい思いをしました。とはいえ、かなり草の根レベルから取り組む必要があるとわかったことは大きな糧でして、新山口向けのイノベーション・プログラムをデザインする際の重要な知見となりました。

2018年末のWORKSIGHTさんからの取材時にはテーマが未定と応えていたのですが、現時点では医療をテーマとして扱うことになったようです。今後も継続して関わっていければと考えています。

 

サービス・デザイン本

『地域発イノベーションの育て方』では地域のリソースを起点にしてどのような新規事業を創出し、育てあげていくための理論と実践をテーマに執筆し、本来の専門であるHCIに関する記述は極力避けていました(唯一触れたのはBuxton先生のくだりですね)。次に執筆するならば、現在関わっているいくつかのプロジェクトの経験を踏まえ、HCIと密接に結びついたサービス・デザインに関する本を執筆したいと考えています。

 

デザイン・シンキング国際比較プロジェクト

こちらはまだ始まったばかりのプロジェクトですが、NTUのiNSIGHT、NUSのService Design Labとの共同プロジェクトです。アメリカで生まれたDesign Thinkingのアジアにおける受容プロセスを質的・量的に明らかにする大規模プロジェクトです。予算次第なプロジェクトですが、こちらも出版できるとよいかなと思っています。

 

PhDを取得して10年強ですが、皆様のおかげで毎年様々なプロジェクトに携わることができています。定年までさらに25年と考えると、まだまだ刺激的なプロジェクトに携われそうで、より一層楽しみです。

 

それではごきげんよう

 

# このブログはone of the worst international airportsと呼ばれるタシュケント国際空港のバーのカウンターでビールを飲みながら書きあげました。ラウンジは3大アライアンス未加入のウズベキスタン航空用しかありません

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