dangkangの日記

主に日常,たまに研究と仕事について

いだてん、スペキュラティブ、進化思考

久々にブログらしいブログを書こうと思う。お題はいだてんである。

 子供の頃、「毎週日曜に大河ドラマをみたい父親 vs 元気がでるテレビを見たい私」といった構図があった。なぜあんな退屈なものを毎週父親は見たいとのかと思っていた。そして現在、当時の父親ほどの年齢になってみると、毎週大河ドラマを楽しみにしている私がいる。

 

いつから年間を通してみるようになったかを思い出そうとwikipedia大河ドラマ一覧を検索してみたところ、1年間通して観たのは2004年の「新選組!」が最初だ。それ以来15年間、毎年見ているわけではなく、幕末明治を中心に観てきた。個人的なベスト3をあげるならば、新選組龍馬伝真田丸かな。21世紀スペシャル大河を含めるならば、坂の上の雲が1位だ。いだてんはベスト3に入るかとそう議論ではない。記録よりは記憶に残ったドラマである私なりの理由をこのブログで書き残しておく。

 

脚本家のクドカンのドラマの特徴に関する批評はすでに多くの専門家が書いているし、私の仕事でもない。個人的には、IWGP(2000)、木更津キャッツアイ(2002)、あまちゃん(2013)あたりが好きだ。素人目線で恐縮ではあるが、主人公に加えて、様々な魅力的な人物が織りなす複雑なストーリーラインからなる群像劇が特徴であるかと思う。

 

先に「記録よりは記憶に残る」と言った。その理由はこのようなドラマの特徴から来るものではない。目頭が熱くなったシーンは多くあったけれど、金栗四三がはじめてオリンピックに出場した1912年から1964年までの約50年間の物語を通じて突きつけられた(と私が解釈する)1つのメッセージがその理由だ。

 

そのメッセージを考えるに鍵が、未来洞察にもとづくデザインという手法である。未来シナリオを描き、そこからバックキャストを行い、アイディアを考えるというものである。これまで大学や仕事の現場で、未来洞察ワークショップをいくつかや実施する度にもやっとしていた。というのも、皆が同じ予測データを使いがちで、当然ながら、ありふれた事業アイディアが生まれてくるためだ。ワークショップの設計のまずさが一番の問題であって、参加者に非はない。

シナリオ・プランニング――未来を描き、創造する

シナリオ・プランニング――未来を描き、創造する

 

 

未来洞察ワークショップにおいて多様性に富む事業プランを生み出すためのツールや方法について模索していたことろで、先日私がモデレータを努めたNOSIGERの太刀川さんのセミナーにて、彼の提唱する「進化思考」から示唆を得ることができた。

 

進化思考とは生物学における思考法をデザインにおけるhow(形態)とwhy(関係)に応用するための理論的枠組みである。関係に関する4つのアプローチと形態に関する8つのアプローチで構成されている。単に現在から未来を予測するにしても、系統樹を踏まえた変異のアプローチにもとづいた予測をすることで、連続性と多様性を保ちつつありうる未来をデザインすることができる。

 

未来予測とデザインの1つの手法であるSpeculative Designの課題として、4つのありうる未来(possible,plausible,probable, preferreble)を想定するためのhowの部分が欠落している点が挙げられる。ゆえに、ただの点でしかない未来か、連続性はありつつも皆のよく考えるうる陳腐なありうる未来を考えてしまいがちだ。このような課題を進化思考のフレームワークを用いて解決できると考えたのである。

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること

 

 

話をいだてんに戻そう。いだてんは1912-1964年という約50年間という1つの流れの中でのドラマであった。現在我々が存在する2019年は、この系統からすれば、数あるありえた未来のうちの1つとして認識されている。つまり、1912-1964年の歴史を通じて、2020年という現在が1964年のオリンピックを成し遂げた様々な人達の描いた望ましい未来であったかというメッセージを我々に投げかけているような気がして、目頭が熱くなったというわけだ。

 

余談ながら、現在の視聴率の計測手法は3種類採用されている。最近ではリアルタイム視聴率とタイムシフトの7日内再生率も含まれている。日経が報じている歴代最低資料率というのは、放送翌日にリリースされているから、タイムシフト分は考慮されていないことがわかる。実際、私もリアルタイムでは見ておらず、2時間ほど遅れて視聴した。

PMでリアルタイムの視聴率(世帯/個人)とタイムシフトの7日内再生率(世帯/個人)を同時に調査する地区【関東地区・関西地区・名古屋地区】
PMでリアルタイムの個人視聴率と世帯視聴率を同時に調査する地区【北部九州地区】※2019年4月〜調査開始
世帯視聴率を視聴率測定器(オンラインメータ)で、さらに個人視聴率を日記式アンケートで調査する地区【関東・関西・名古屋地区を除く民放3局以上エリア※北部九州地区は2019年4月〜PM調査開始】

 

広告出稿主にとって視聴率は出稿にあたっての重要な指標といえるが、リアルタイム、24時間、1週間、3ヶ月、6ヶ月、1年など、より多様なスケールでの影響力を考慮に入れたブランディングへと舵をとってもよい時代が到来しているのかもしれない。