dangkangの日記

主に日常,たまに研究と仕事について

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(この原稿はニース-フランクフルトの機上のテンションで書かれています。)

2015年4月1日付で、山口大学・国際総合科学学部(Faculty of Global and Science Studies)・准教授に就任しました。2015年、山口大学は創基(この単語自体はじめて知りました)200周年を迎えます。200周年事業の一環として、新学部である国際総合科学学部が立ち上げられました。おや、どこかで聞いたような話ですね。2008年、慶應義塾は、150年周年事業として、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)を設立し、僕はその立ち上げに参加しました。7年前と同様、しかも地元の国立大学にて、新学部の立ち上げに再び参加することになったのです。

少し宣伝がてら国際総合科学学部を紹介しておきましょう。というのも少し変わった特徴があるのです。3つのキーワードで説明していきますね。グローバル、プロジェクト、デザインの3つです。

まずは、グローバル。何やら手垢のついた言葉ですね。国際総合科学学部の学生は1年次の夏季休暇中に短期の語学留学、2.5-3.5年に1年間の留学が義務づけられています。また、帰国後のクラスは原則英語にて開講されます。卒業時にはTOEIC730点が最低要件として定められています。私立大学や公立大学ではこういった試みはすでに実施されている例もありますが、国立大学では初でしょう。

次に、プロジェクト。4年次、全ての学生はゼミではなく、プロジェクトに所属します。これは従来の「研究会」、あるいは、「ゼミ」と呼ばれていたものを「プロジェクト」へと単に言葉を置き換えたものではありません。原則、全てのプロジェクトは企業や行政と紐付けられています。学生は、チームを組み、企業や行政の提供する課題に取り組むことになります。企業や行政の課題に対する企画提案が卒業要件となります。

最後のキーワードがデザイン。僕にこの学部で求められていることはデザインを教えること。プロジェクトではデザイナとしての振る舞いが求められます。ここでいうデザイナとは、かたちを作る「クラフトマン」としてのデザイナに加えて、新たな価値を総合的に作り上げる「アーキテクト」としてのデザイナを指します。このようなゴールに対して、調査、分析、企画立案、設計、実装、評価までのデザインプロセスに関する理論、手法を座学と演習を通ぶカリキュラムを用意しています。

さて、ここまでは教育の話でしたが、研究については、地方ならではのテーマを掘り下げたいと考えています。具体的には、地方経済とイノベーションに関心をもっています。

1つ目のキーワード、地方経済。2010年よりWanicというプロジェクトに携わっています。東ティモールからフィリピン、ラオスと活動の場を移してきましたが、現地のリソースを使って、現地のひとたちと共に新しい商品を作る、というスタンスは変わっていません。場所はどこであれ、イノベーションの種は存在している。それが途上国であれ、地方であれ、僕は同じと考えています。フィールドワークを重ねることで、無限のアイディアを獲得し、新たなコンセプトを打ち出すことはできるでしょう。

次に、イノベーション、これも手垢がついた言葉ですね。イノベーションという単語が使われる際、どの意味で使われているのか不明瞭な場合もあるので、ここでは明確に定義しておきましょう。ドラッカーの言葉を借りるならば、単に「財とサービスを供給するだけではなく、よりよく、経済的な財とサービスを供給すること」がここでいうイノベーションです。つまり、「経済的な価値」を伴う商品やサービスを新たに生み出すということですね。単に新しいものを生み出すことと新しい財を生み出すことは根本的に異なります。製品と商品が異なるようにね。単に作るだけではなく、売れるものを作る必要があります。

イノベーション理論の研究者は数多い(それでもマーケティングに比較すると少ない)ですが、研究と実践に関わっている研究者は稀でしょう。僕はこれまでアカデミックとビジネスという(直線)振り子、あるいは、ビジネスとクリエイションとテクノロジーという(円錐)振り子を意識しながら、自ら会社を立ち上げ、あるいは、立ち上げに参加し、いくつかの製品やサービスを世に出してきました。残念ながら全てが成功したわけでもなく、20代のほとんどは失敗の繰り返しでしたが、その失敗があって30代の今があると思っています。今後は、ここ山口でも理論と実践を行きつ戻りつ研究をしていきたいと考えています。

いくらでも話をしてしまうのは研究者の性ですね、おしゃべりはこのあたりで一旦ストップ。続きは山口 or 東京で。


それではごきげんよう